電話では又後が面倒なと思って、近所の公衆電話へ行って本家の姉を呼び出したものだった。と、案の定、何でそんなに何遍も会わんならんねん、と云うようなことなので、五通話も費して訳を話すと、それはそうかも知れないけれども、どうなるとも分らないうちから、二人きりで会うようなことを許してよいかどうか私には分らないから、今夜兄さんと相談して明日返事をしようと云う。で、幸子は翌朝、向うから懸って来ないうちにと、又公衆電話へ走って行って、どうやら義兄が―――時間、場所、監督等、いろいろ条件つきではあるが、―――許可したことを確かめてから、雪子の方を当ってみると、これは分りが早くて直ぐ承知した。 その日も幸子が、手土産に切り花を一束提げて井谷の家まで附き添って行き、最初に紅茶の接待に与《あずか》って四人で暫《しばら》く雑談をしてから、瀬越と雪子は二階へ案内され、幸子は階下で井谷と話しながら待っていたが、一時間ばかりと云う約束が三四十分超過した頃に、二人は降りて来た。帰りは瀬越が一と足後に残ることになり、姉妹が先に暇《いとま》を告げたが、今日は日曜で悦子が家にいることを慮《おもんぱか》って、幸子はそのまま神戸へ出、オリエンタルホテルのロビーへ行ってもう一度お茶を飲みながら、会見の模様を雪子に聞くと、 「今日はほんまによう話《はな》しやはったわ」 と、そう云う雪子も、その日はわりにいろいろと気軽にしゃべった。先ず、瀬越から四人の姉妹の間柄について質問があったこと。なぜ雪子や妙子が本家よりも分家の方で多く暮しているかと云うことや、妙子のいつかの新聞の事件のことや、その後それがどうなっているか等々のことについても、相当突っ込んで尋ねられたので、差支えない限りは答えたけれども、本家の兄が悪く取られるようなことは一言も云わなかったこと。瀬越は、僕にばかり質問させないで、あなたの方からも聞いて下さいと云うことであったが、雪子が遠慮しているので、進んで自分のことを語り出したこと。自分は所謂《いわゆる》「近代的な」感じの人より「古典的な」感じの人を求めていたために今日まで結婚が晩《おく》れたのであるが、あなたのような方に来て戴ければ勿体《もったい》ないと思っている、と云って、「身分違い」と云う言葉を二度も三度も繰り返したこと。それから、自分は婦人関係について過去に何の引っ懸りもないけれども、一つお耳に