うてるあんばいで、それがときどき光子さんに「こないせエ、あないせエ」と指図《さしず》してるらしいて、「いっそこないなってしもたら姉ちゃんが来てくれたかってええし、……そうと違うかったら、お梅が今頃梅田の駅で待ってるはずやよって、あれに渡してくれたかってええけど、お梅は所知らんよって頼むのんやったらよう場所を教《お》せてほし。そんでこっちの名は鈴木いうて訪《た》ンねて来てほし。」――そこでまた何ぞこそこそ相談するらしいて、暫《しばら》くたってから、「あのなあ、姉ちゃん、……」と、えらいいいにくそうにして、「……あのう、えらい済まんけどなあ、も一人着物ないようにして困ってる人あるねんけど、もしどないぞなるねんやったら、あんたのハズさんの着物、洋服でも日本服でもかめへんよってなあ、……」いうて、「それからあのう、えらいえらい勝手ばっかりいうて申訳ないねんけど、……おあし二十円か三十円持って来てくれたらなおのこと有難いねんけどなあ」いうのんです。「おあしの方はどないぞなるけど、まあとにかく待ってなはれ」いうて電話切ってしもてから、直ぐに自動車いいつけて、夫には「うち[#「うち」に傍点]ちょっと大阪まで行て来ま。光子さんが急用やいやはるさかい」とたったそれだけいうて、二階い上って大急ぎで箪笥《たんす》の中から揃《そろ》いの着物や何やかんやと、夫が余所行《よそゆ》きの時着る絹セルの単衣《ひとえ》と羽織と絞《しぼ》りの三尺とを出して、風呂敷に包んで、それ女子衆に持たして先いそッ[#「そッ」に傍点]と玄関まで出さしましたが、「なんやいな今時分からそんな包持って?」と、さすがに夫は気になったらしゅう、自動車い乗ろとする時に奥から出て来ていうのんでした。多分私の様子が慌《あわ》ててもいましたし、顔色も変ってたですやろし、不断着のまま髪も直さんと出て行ことするのんが、よっぽどけったい[#「けったい」に傍点]やったのんに違いないのんで、「なんやうち[#「うち」に傍点]にもさっぱり様子分れへんねんけど、今夜急にこの揃いの着物なあ、――」と、私は知って風呂敷の結び目から着物の端《はし》出して見せて、「――これどないしても着んならんことが出来たんで、大阪の店まで届けてほしいうてやんねえ。何ぞ素人《しろと》芝居でも始まったんかも分れへんけど、うち自動車待たしといて直ぐ帰って来るわ」いうて、もう時刻もお