》ったりした事が考え出されて、またジリジリ腹立って来て、ええ、こんなもん、拵えんといたらよかった、いっそ飛び着いてずたずた[#「ずたずた」に傍点]に引き裂いてやろか知らんと、――ほんまに男がいエへんかったら、それぐらいなことしたかも分れしませんねん。男はその様子感づいたらしいて、二人がなんにもいわん先に「さあさあ」と追い立てるようにして、自分も着物着換えるやら、私からお金を受け取って宿屋の方では「いりまへん」いうのん無理に勘定《かんじょう》済ますやら、「あ、そういうと奥様、まことに恐れ入りますけど、今のうちに奥様のお宅と光子さんのお宅とい電話かけといて下さいますと、なお都合よろしいですがなあ」いうたりして、ちょっとも隙《すき》与えんようにするのんでした。私は私で家の方が心配でしたよって、「うち[#「うち」に傍点]今|直《じ》ッきに光子さん送ったげて帰るけどなあ、光子さんとこから別に何ともいうて来やはれへんかったか?」と女子衆《おなごしゅ》呼び出して聞いて見ますと、「はあ、さっき電話がおましたんで、どない申し上げてええのんか分れしまへなんだよって、何時頃とも申し上げんと、ただお二人さんで大阪い行っておいでですいうときました」いうんです。「そんで旦那はんもう寝やはったか?」「いいえ、まだ起きてはりまッせ。」「今すぐ帰りますさかいいうといてんか」いうて、光子さんの家の方へは「今夜松竹い行きましたんですけど、あんまりお腹《なか》減ってしもたんで、出てからちょっと鶴屋食堂い行きましてん。えらいおそなりましたよってこれから光子さん送って行きます」いいますと、お母様《かあさん》が出て来なさって「まあ、そうでおまッか、あんまり帰りがおそいのでたった今お宅様い電話したとこでしてんわ」いいなさる様子が、警察からなんにもいうて来てエへんこと確かでした。そんでそんならええ塩梅《あんばい》や、一刻も早《はよ》自動車で帰ろいうことになったんですが、男は三十円のうち半分ばっかり残ったんをみんなそこの男衆や女子衆にやってしもて、どんな事あっても決して迷惑のかからんようにして欲しい、その筋からこれこれいう取り調べがあったらこれこれいうようにいえいうたりして、そないな時にもそらもうびっくりするほど細かい所い気イ廻るのんです。それからようよう、――私はそこい着きましたんが十時ちょっと過ぎた時分で、一時間ばっ