うさん》海水浴の人|行《い》てますし、そんな人目につくようなこと出来《でけ》しませんよって、また相談し直して、いっそのこと此処二、三日|大人《おとな》しいにしてて、夫や家の者に油断さしてから、海い泳ぎに行くように見せて逃げ出してやろいうことになりましてん。そいでそないするのんには、二、三日して気イ許すようになった時分、「毎日家の中に閉じ籠《こも》ってたら病人みたいになるさかい、海い這入《はい》ることぐらい許して頂戴。海水服一つ着たなりで、何処いも行かんと前の浜にいますよって」と、夫が出かける時に断っといて、ほんまに海水服着ただけで海岸い出る。同時にお梅どん光子さんの着物持って、浜で待ってて、直きに着換えさす。着物は海水服の上からスッポリ被《かぶ》れるようなワンピースの洋服にして、帽子もなるだけ縁《ふち》の下った顔の隠れるようなのんがええ。浜には人がウヨウヨしてて、かいって気イ付けへんやろけど、洋服やったらこの頃めった[#「めった」に傍点]に着たことないのんで、尚更《なおさら》誰に見られても私やいうこと分れへんやろ。待ち合わす時刻は朝の十時から十二時までの間、――その時分やったら夫きっと大阪い行てる。日イは、雨さい降らなんだら今日から三日目、その日イいかなんだら四日目も五日目も、毎日来ててもらう。と、そんな相談してましたら、またええ智慧《ちえ》出て来て、光子さんの方は二日目の晩あたりに一と足先浜寺い行てる。そないすると夫から問い合わせの電話かかったとき、「光子は昨日から別荘の方い行ってます」と、本宅の方でもいうやろし、光子さんの方いかかって来ても、「うち[#「うち」に傍点]こっちい来てること姉ちゃん知りゃはれしませんさかい。来やはるはずあれしません」いうて、自身で電話口い出てやんなさったら、これは遠い所い逃げたんやない、海で死んだのんかも分れへん思て、何より先に海の方捜索するやろ。そいでええ加減たった頃に、「実は今さっき奥様お見えになりまして、うっかり[#「うっかり」に傍点]してる間アにえらい事になりまして、……」とお梅どんから知らしてやる、この計略で時間計算してみましたら、家の者ら気イ付くまでに一時間半か二時間はかかる。そいから大阪い知らせ行って、問い合わせの電話かけたりして、夫|香櫨園《こうろえん》い帰って来るのんざっと[#「ざっと」に傍点]一時間、海捜したり近所|尋